最低賃金の目安が、全国平均1118円に 63円上げ全都道府県で1000円を超す

1. 過去最大の引き上げ額と目標への進捗

  • 引き上げ額の概要: 厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2025年度の最低賃金の目安を全国加重平均で時給1,118円とすることで合意した。これは現在の1,055円から63円の引き上げであり、「過去最大の増加幅」となる。
  • 連続引き上げと伸び率: 最低賃金の引き上げは「23年連続」であり、伸び率は「6.0%」を記録した。これは、時給換算で示すようになった2002年度以降で最大だった2024年度の目安(5.0%)を上回る。
  • 政府目標との関係: 政府は「20年代に全国平均で1,500円とする目標を掲げる」。今回の引き上げは、目標達成に必要な年平均7.3%には届かなかったものの、石破茂首相は「目標に配慮いただきながら、データに基づく真摯な議論が行われた」と評価し、「年によって変動はあるが、今後さらに努力をしたい」と述べた。

2. 地域間格差是正への取り組み

  • ランク別引き上げ額: 都道府県を経済状況で分類したA・B・Cの3つのランクに基づき、具体的な引き上げ目安が示された。
  • Aランク(東京、大阪など6都府県): 63円
  • Bランク(北海道、広島、福岡など28道府県): 63円
  • Cランク(秋田、沖縄など13県): 64円
  • Cランクの優遇: 「下位ランクの地域の引き上げ額が上位ランクを上回るのは初めて」であり、これは「地域間格差を是正する狙いがある」ことを明確に示している。
  • 全国最低賃金の1000円超え: 目安通りの引き上げが実現すれば、「すべての都道府県で1000円を超える」ことになる。

3. 今後のプロセスと課題

  • 地方審議会での決定: 国の審議会が示した目安を踏まえ、今後「各都道府県で改めて審議会を開き、実際の引き上げ額を決める」プロセスが待っている。
  • 「年収の壁」と発効日: 最低賃金の上昇により、いわゆる「年収の壁」を意識した就業調整の時期が早まるとの意見が指摘された。多くの都道府県で10月から新しい最低賃金が適用される予定だが、審議会はこれについて各地で十分話し合うよう要望し、発効日を遅らせるよう求める使用者側の主張に対応する姿勢を示した。

4. 賃上げ動向と物価高騰への対応

  • 春季労使交渉の賃上げ率: 今年の春季労使交渉での賃上げ率は連合の最終集計で「平均が5.25%」となり、33年ぶりの高水準だった2024年を上回る勢いを見せた。この賃上げの動きは、「大企業だけでなく中小企業でも広がっている」ことが経団連や日本商工会議所の調査で明らかになっている。
  • インフレの考慮: 審議会は「インフレが労働者の生活を圧迫していることも重視した」。会議では、最低賃金の水準で働く労働者が直面する物価の動きを分析し、食料や光熱費などの「基礎的支出項目」が、2024年10月から2025年6月までの平均で「5.0%」、食料に限れば「6.4%の上昇」であったことを確認している。

5. 議論の経緯

  • 異例の長期議論: 今回の最低賃金議論は「44年ぶりに7回目までもつれ込んだ」とされており、その難航ぶりがうかがえる。
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