外国人の「経営ビザ」要件を厳格化 資本金500万円→3000万円に引き上げ

日本政府は、外国人が日本で起業するための「経営・管理ビザ」の要件を厳格化する方針です。これは、ビザの悪用を防ぎ、本来の目的から逸脱した不適切な滞在を防止することを目的としています。2025年8月26日の日本経済新聞の報道によると、資本金要件の大幅な引き上げに加え、経営者の経歴・学歴要件の導入、事業計画の確認義務化などが検討されています。
主要な変更点と事実
- 資本金要件の引き上げ:
- 現状:「500万円以上の資本金を準備」もしくは「2人以上の常勤職員を雇用」のいずれか。
- 変更後:資本金「3000万円以上に引き上げる」。これは現在の6倍に相当します。
- さらに、「1人以上の常勤職員の雇用」とともに必須条件となり、両方を満たすことが求められます。
- 経営者の経歴・学歴要件の導入:
- 新たに「3年以上の経営・管理経験」または「経営・管理に関する修士相当以上の学位」が必須条件として盛り込まれます。
- 事業計画の確認義務化:
- 在留資格の決定時には原則として、公認会計士や中小企業診断士による新規事業計画の確認が義務づけられます。
- 背景と目的:
- 「経営ビザでの在留者は2024年におよそ4万1000人と5年前に比べて5割増加した」。
- 制度を悪用し、「経営実態のないペーパーカンパニーを申請して日本に滞在する外国人が増えているとの指摘がある」。
- 国会でも「手軽に定住するための抜け穴になっている」という意見が相次ぎ、不正な在留の防止が急務となっています。
- 入管庁によると、韓国では同様のビザに必要な資本金を3億ウォン(約3200万円)、米国は10万〜20万ドル(約1500万〜約3000万円)ほどに設定しており、「日本での取得条件は諸外国に比べて緩いと言われていた」。
- 施行時期:
- 出入国在留管理庁がパブリックコメント(一般の意見公募)を経て、10月に省令の改正を目指しています。
- 懸念点:
- 要件の厳格化は不正な在留を防止する一方で、「取得のハードルが上がれば日本での起業の意欲がそがれるおそれもある」。
- 有識者会議では、資本金の引き上げについて「まじめに経営する意欲をもつ人の排除につながりかねない」という意見も出ています。
- 「在留資格の更新時の調査を厳しくするべきだ」との指摘もあり、経営実態の把握強化の必要性も認識されています。しかし、入管庁の幹部からは「すべての企業を調査するには人手が足りない」との発言があり、現状では申請書類に不自然な点があった場合などに限り現地調査を実施しているとのことです。
過去の経緯
- 2014年の入国管理法改正により、従来の「投資・経営」ビザが「経営・管理」ビザに変更されました。
- この変更は、外国人による日本での起業を促し、経済の活性化と技術・サービスの多様化につなげる狙いがありました。
まとめ
今回の「経営・管理ビザ」要件厳格化は、制度の悪用を防ぎ、健全な起業を促進するための重要な措置と位置付けられています。しかし、真摯に日本での起業を目指す外国人にとって過度な障壁とならないよう、今後のパブリックコメントや制度運用における柔軟な対応が求められます。特に、経営実態の把握における人員不足の課題や、更新時の調査厳格化といった意見への対応が注視されます。
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